温もりの家


思い起こせば 温もりの家。

濁ることはない血の繋がりの果てで
見つけた愛は 眩しい灯り。

人生の犠牲の中で
荒んで、汚れた心を
痛いほどの美しさで 照らしている。

浅く始まる夜の時間が
感傷に染まる時
思い起こせば いつかの悦び。

自由のない空の下でも
夢のない星の下でも
胸を揺さぶる優しさが
心の形をなんとか留めている。

頼りない言葉で語る愛など
美しいとは呼べないけれど
いつかは、そんな悲しみも
還るべき温もりに染まればいい、と
遠い空の忘却を想う。

昼と夜を結んだ雲が
地平線を染めて、沈んでいく。

思い起こせば いつかの悦び。
思い起こせば 温もりの家。

濁ることはない血の繋がりの果てで
見つけた愛は 眩しい灯り。





距離感


枯れた想いで見上げる空。

巡る時代の中で
空と自分との距離は
いつの日も変わることなく

常に一定の間隔で
変化することのない距離感。

触れるから、傷が付く。
触れるから、汚れてしまう。
そんな不器用な痛みが
過去のどこかで嫌な匂いを漂わせている。

あらゆる環境の中で
他者との距離や 心との距離や
自分と周囲との距離感が分からなくなり

今は空だけが
唯一、安定した距離感で
接することが出来るのです。

この汚れた手の届かない場所で
見上げる風景は まるで違う世界のようで
心地が良く、優しく、そこに在り続ける。

いろいろなものから逃げるように
遠ざかり閉鎖された心は
空の静寂を想い、ただ時を刻んでいく。

この腕の長さの外側で
遠い日の誰かは笑っているでしょうか。

この腕の長さの内側で
僕は笑うことなど出来ないけれど
静かな空なんかを見上げながら
ふと、過去を思い浮かべています。

こんな距離感でしか
人を想えない心をお許しください。





夜の続き


朝明けの空に はみ出した夜の続き。

まぶたの裏に潜んだ病が
綺麗な空の風景さえも
染めてしまう前に
愛を表現出来たらよかったのに、と

憂鬱な夜の終わりゆく余韻の中で
苦い溜息を転がしていた。

夢や理想を 問いかけた星の光りは
心を美しく照らしてくれることもなく
虚しく静まり返る時間の流れ。

歪んでしまった魂を見つめ
隠せない痛みを 声を殺して叫ぶ。

生きる事に悲しみ以外の感情を
見つけることなど、出来たのだろうか。

人と人とは繋がり合うことなど
出来ないけれど
それでも、愛を語る意味など
在ったのだろうか。

心の正しい形は分からない。
人の在るべき姿など、知ることは出来ない。

それは、人間になれなかった野獣の嘆き。

指先に触れた朝明けの空に
消えた月の灯りが映っている。

僕はまだ、はみ出した夜の続きを見ている。





雨の奏でる午後


雨の奏でる午後
しばらく降り続いておくれ
一粒一粒の悲しみが
物足りない心を埋めてしまうまで

雨の奏でる午後
感傷に誘われるままに
いくつかの遠い記憶が
ぼやけた風景に浮かんでいる

雨の奏でる午後
永遠を知らない季節の中で
罪深い日々の傷跡も
いつかは眠りにつく時が来るだろう

雨の奏でる午後
戻らない日の幸せを想う
愛のひと欠片が
乾いた手の平から落ちないように

雨の奏でる午後
嘘も汚れも悦びも
平等に染めていく


雨の奏でる午後
いつまでも降り続いておくれ
心の全てが
その調べに染まるまで





迷夢


不確かな言葉ばかりが
この部屋には並んでいます。

世界に言葉が無く
ただの空白だったら
生まれない悲しみも在っただろうか。

言葉と感情が
繋がっているのなら
語れない愛をお許しください。

静寂に沈む真夜中の世界で
星の輝きは 真実を失ったように
儚い揺らめきで 夜空に溺れている。

不純物に満ちた心が
この夜という空間で証明できるものは
おそらく痛みしかないのでしょう。

不確かな言葉ばかりが
この部屋には並んでいます。

言葉は言葉を運び
風景のあらゆる物体も、情報も
痛みも、感情も、言語化された世界。

そんな世界で掴まえられるのは
完全な悲しみだけのようです。

だから今宵も
悲しみを語っているのです。

嗚呼・・僕は
「悲しみを語りすぎた。」






溶けてゆく世界の色彩


溶けてゆく世界の色彩。

訪れた太陽の催促に
知らない空へ流れてゆく夜は
小さな孤独を星屑に光らせている。

傷ついた夢の残骸が
愛を尋ねるように
虚しく転がったままの部屋で
鮮やかではないけれど
静かな朝の光が差し込み、照らす。

長い長い夜を歩いて
移り変わる世界は
終わりとはじまりを求めて
また、新たな一日がこぼれて行った。

ここに残った悲しみは
季節を越えて
どんな日々の下に辿り着けるだろう。
そんな痛みを軽く呟いて
見つめた夜明け。

溶けてゆく世界の色彩。

鮮やかではないけれど
静かな朝の光が差し込み、照らす。

絶望だけではなく
ただ、希望に満ち溢れることもない
真実だけが浮かぶ時間。

終えてゆく夜とはじまる一日と
心に停止したままの悲しみと

そして、溶けてゆく世界の色彩。






ブロとも申請フォーム