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捜索


人を捜していました
世界のどこかで
私を理解してくれる人を

人を捜していました
同じ色の同じ形をした悲しみを
持っている人を

人を捜していました
たったの一夜
ただ、それだけのために

人を捜していました
宇宙の孤独に光る小さな星のように





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エキストラ


気付かれることは恐ろしい
感づかれることや、悟られることは
何よりも恐ろしいです

昨日、あなたの部屋の前まで行ったのですが
僕はあなたに会うことはおろか
その足跡までも
悟られてはいけまいと
泥棒のように忍んで
ノックも置手紙もせずに
逃げてきました

触れてしまえば汚してしまう
悲しい罪に占められた
その指先をあぐねては
あなたにしてやれることは
干渉しないことだけでした

草木のように澄まし
風のように軽やかに
僕はあなたの視界の片隅で
今日もただのエキストラです





追従


大丈夫
多くの人にとって
それは思いがけないことであるかもしれないが
僕にとってこの夜の糾弾は
約束されていたものだと知っている

捨て去ることはできない過去から逃れ
そうして迷いながらも
辿り着いたこの場所は
少しも違わない
生まれた日の月がそのまま取り残されている

打ちのめされた心を抱いて
まだゆけると
終わりいく季節へ追従するのもいいだろう

誤った命を
救えるはずもない手の平で
握り潰して






残骸


私はもう無意味なのです
僕というものが輪郭を失い
すなわち心というものが
喪失した時
私は終着したのです

今、私が立っているのは
最後の終着駅
もはや、これ以上の道はなくなりました
問うことも、死にたい、も
もうここにはないのです

あるのは海へ還れなかった
心の残骸
波際のギリギリまでいって
それでも打ち返された
哀れな残骸




水鳥


僕は静かに死のうと思うのです

ふと、水鳥が知らぬ間に羽ばたいて
どこかへと去っていく刹那
鮮やかな青空の鏡映を覚えた水面に
一瞬だけの小さな波紋を残したように

人の心に留まる「僕という他者」を
僕は本当に丁寧に、かつ、静かに
まるで、あと少しで溶けてしまう
か細いロウソクの火を扱うように
葬らなければならないのです

人は人を想い、人は人を忘れ
時間や距離、環境の変化の中で
その姿も、その重みも
変わっていきますが
僕が静かに死ぬためには
僕自身もまた、僕の中にいる他者を
葬らなければなりません
この残された愛という何かで
(それはすでに錆びたもので)
想う人々を
拙い友たちを
この血のつながりを
僕は葬らなければなりません

確かに、自分のことを
想ってくれる人など
数えるほどしか居ないでしょうし
何よりこんな自分が
「誰かの心の他者」となっていることなど
あまりにリアリティのない話ではありますが
しかし、まったく居ないとも言い切れない

いえ、事実、悲しむ人がいることを知っています

いわば確信犯でもあります
だからこそ、僕はその悲しみを
僕という他者の重みを下げることによって
少なくしようと努めているのです

僕は静かに死のうと思うんです
僕は静かに死のうと思うんです

それがせめて
これまで他者の心を濁すことしか出来なかった
汚い水鳥ができる
最後の償いのような気がしているのです


羽ばたきます
僕はいつかの空で
太陽の目を盗み
風の去った瞬間
水面に一瞬だけの波紋を残して
羽ばたきます
僕はいつかの空で

そしておそらく
その青空は美しいままです





憧れ


僕は一歩、外側から
世界を眺めています

遠ざかってゆく
金色に傾いた世界も終えて
それが何度目かの夜であるかも
わからぬほど
離れた場所でいつの間にか
しかし確実に進んでいく、それ

世界の中において
僕だけが異物であることなど
知るまでにそう長い時間は
かかりませんでした
陳列する季節の雲のように
それが至極当然の中にあることを
僕は朝に溶かされる月のように
強いては宿命とも言えるその哀れさを
やがて言葉にしてきたのでした

僕は一歩、外側から
世界を眺めています

(ただ、その輪に入れず)

僕は一歩、外側から
世界を眺めています

(死にたいほどに、憧れて)




プロフィール

Ides

Author:Ides
   
病の中で歪んだ季節を

刻むべき場所が僕には必要でした。

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