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患った夜


患った夜に雨が降る 
患った心が雨に打たれる 

萎れた草がベランダの鉢の中を 
死んでいった 

この夜を乗り越える力が 
僕にはなかった 

呼ぶべき神様の名前も 
僕にはなかった 

患った夜に雨が降る 
患った心が雨に打たれる 

いつものように 
死にたいと 
言えないわけではなかったが 
死にたいと 
僕は言わなかった 
死ぬ場所さえ 
この夜にはなかった 

患った夜に雨が降る 
患った心が雨に打たれる 

患ったのは世界 
患ったのは雨 
患ったのは心 

死んでいった 
萎れた草のように 
僕は窓辺に寄りかかり 

患った夜に雨が降る 
患った心が雨に打たれる 





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私は自分以外の人間を知らない
だから私も自分以外の人間に私を見せない
白い雲が午後の地上を旋回する時
あなたはあなたの知らない空で
私が見ている白い雲のことなど
考えもしないだろう

しかし私は
あなたがどこの空の下にいるのか
考える時がある
あなたが何をし
あなたが誰と居るのか
考えることがある

私は自分以外の人間を知らない
だから私も自分以外の人間に私を見せない
私は世界のどこにも居ない
私の世界にも誰もいない
私は私の世界に残る人々の影を追いかけている
海が波を寄せるように
私の髪の毛を揺らした風が
あなたのあらゆる情報を求めていようと
あなたはそれを知ることはないし
それがあなたである確証もない

いつか、あなたの世界に
私が確かな存在として
そこに立つことがあったなら
私があなたではなく
あなたの影を追っていたのと同じく
あなたも私の影を追うことだろう

私は世界のどこにも未だ存在しえず
あなたの中にさえ居ない
あなたの中に居るのは私ではなく
私の形をした影
そして私の中に居たはずのあなたも
あなたではなく、あなたの影

私たちは私たちを知る人のいない世界で
互いの影を抱いている




輪郭のないものたち


輪郭のない私は 
ゆえに言葉を書き残しておく 
こんな真夜中でも 
もしかしたら私の言葉を 
聞いてくれる人がいるかもしれない 
あるいは通りすがりの誰かが 
目にとめてくれるかもしれない 

私たちは輪郭がない 
ゆえに広い海を漂う 
大きな空を羽ばたく 
無限の電脳空間をさまよう 

どこへでも行けるし 
どこへでも辿り着く 
しかし輪郭がないがゆえ 
誰にも見つけられないし 
どこにも居場所はない 

だから私は 
言葉を書き残しておく 
こんな真夜中でも 
もしかしたら私の言葉を 
聞いてくれる人がいるかもしれない 
あるいは通りすがりの誰かが 
目にとめてくれるかもしれない 
 
今、あなたが私の言葉に 
触れたように 





終着駅


詩が書けなくなった
書かなかったわけじゃない
ひねくれていたわけでもない
書けなくなった

得てきたものは
聞いてきたものは
小さな鞄から溢れんばかりに
余しすぎてしまった

僕は今、列車を待っている
誰もいない駅のホームで
もう来ることはない列車を

でも、もしかしたらと
あの山道や鉄橋を越えて
遠い運河や懐かしい町の中を越えて
もしかしたらと
ひとつの列車を待っている

たったひとつの列車を
戻れない日々をいってしまった
たったひとつの列車を
終着駅のホームで
僕は待っている





揺れていたのは 
夜木の死角で潜むようにあった 
池の波紋です 
月の灯りにこぼれ落ちて 
みすぼらしく薄汚れた池の波紋です 

手の平に隠れるほどの小さな石は 
ゼロ距離で投じられ 
葉のさえずりや音楽さえ飛び越えて 
止まった池の水面を揺らしたのです 
空に余韻も残さぬその一瞬のうちに 

確かに存在している証など到底難しい 
しかし数多の星が光るように 
人は皆そこに生きていて 
そして常に池を揺らしている 
世界の石に 
あなたの石に 
僕の池に投じられたものは 
幾重もの小さな銀河を映している 

いつか大人になりすぎた僕は 
ひとり池のほとりに立ち 
水面の残存に波紋の跡を見るだろう 
花の色や季節の音を思い返しながら 
ふと思うのだ 
私の石は誰かの水面を揺らしただろうか 
(雲さえも動じないわずかな揺らぎでも) 
私の石はあなたの水面を揺らしただろうか 
(宇宙の外れで星が生まれるように) 

今、時の忘れ物を促すように 
僕は石を持っています 
放ることもためらうちっぽけな石を 
ずっと握っています 
いつか誰かの水面を揺らせたならと 
あの石のように 
みすぼらしく枯れたこの池を揺らし 
綺麗な波紋を映したあの石のように 

(なんと愛しいその調べ) 

疑う余地もなかった 
水面は震えている 
歓喜に、感謝に、震えている 
時を経ても尚 
より強く、確かな重さを持って 

ゼロ距離で放たれたあなたの石は 
今もこの水面を揺らしているのです 
ゼロ距離で放たれたあなたの石は 
今もこの水面を揺らしているのです 
まるで星が生まれたように 





霊安室


確かに言葉は難しい 
それ故に僕は言葉をあきらめる 
あきらめた言葉は 
土の柔らかな感触を知らず 
空の色を知らず 
薄暗い霊安室の死体の傍らに無造作に置かれ 
叫ぶことも、ふてくされることもなく 
静かに眠りにつく 

やがて僕も死体となった時 
その薄暗い霊安室に運ばれ 
言葉との再会を果たすことだろう 
そして冷たくなってしまった言葉達を 
暗黙に抱きかかえ、眠るのだ 
謝罪と懺悔と感謝を想い 
僕はようやく詩人となって 
眠るのだ 





プロフィール

Ides

Author:Ides
   
病の中で歪んだ季節を

刻むべき場所が僕には必要でした。

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