詩と呼ばれるもの


詩を見つけて、言葉を探す

詩は悲しくて、涙が溢れてくる

詩の前では、偽りも意味など持たず

詩が映すものは、星屑よりも儚くて

詩が語りかけるものは、死よりも切ない

詩の世界の中で、心はあまりにも無防備で

詩と向き合い、たとえば罪を懺悔して

詩と向き合い、たとえば痛みを叫び

詩に在るべき愛など、分からないまま

詩に壊されて、思考は彷徨う

詩の匂いも、詩の形も、本当は知らない

詩と呼ばれるものは、確かにそこにあるけれど

本当はきっと、僕は

詩を見た事も、詩を書いた事もない





8月の午後


当たり前の8月の午後。

当たり前の暑さで、当たり前にセミが鳴き
当たり前のように、時間は過ぎていく。

生き方も、死に方も
分からないでいた歳月を思い返し
ふと思う。

きっと僕はそんな当たり前の日々を
望んでいたんだ、と。

当たり前の季節を感じ
当たり前の日常の風景の中で
当たり前の幸せを願い
当たり前の愛を信じて

そんな普遍的な 人間の在るべき姿。
そんな当たり前の生き方すら出来なかった。

歩くほどに歪んだ足跡は
今も心に 窮屈な痛みを残している。

過去が滲む8月の午後。

切なくなるような夏の匂いに包まれている。

当たり前に過ぎていく時間の中で
静かな風がカーテンを揺らしている。






繊細な風景


閑散とした記憶に浮かぶ あれは繊細な風景。

古びたデッキチェアに寄りかかる想いは 
物静かに、遠いどこかの日々に埋もれている。

悪戯に通り過ぎる夏の夜風が
何を問うわけでもなく 心を揺らしていた。

目の前に見える夜の終わりが
世界の果ての一つならば
憂鬱に眠れなかった真夜中の時間も
意味があったのだろうか。

閑散とした記憶に浮かぶ あれは繊細な風景。

ベランダの隅で 置物に囲まれて
切ないサボテンが影を落とす。

寂しさと呼応しているような
細やかな時間が流れる夜の終わり。

染みついた壁にかかるナイロンコートが
季節外れな思い出を 投げかけてくる。

何かに促されるように
歳月の意味を探している。

しわだらけの手の平に
従順な愛の意味を 与えてください。

乾ききった手の平に
疑いのない命の意味を 与えてください。

無意味だったような人生の時間を
一つ一つ数えている。

閑散とした記憶に浮かぶ あれは繊細な風景。





忘却の墓場


ここは空白の地帯。
人生の中で
捨ててしまったものが眠る墓場。

季節のない午後に
思い出される情景の数々は
心を寂しく染めるばかりで

雲が無作為に浮かぶ 茫然とした空に
どんな自由を描けるだろう、と
沈んでいく想いの中で
曖昧な時間は流れていく。

ここは空白の地帯。
人生の中で
汚れてしまったものが眠る墓場。

廃棄され 沈黙に転がるそれらは
寂しい夢の残骸達。

気付けば何も残っていない心に
注ぎ込まれる痛みは
後悔なのだろうか。

心を形作る最低限の感情が
午後の微風に 力なく揺れる。

ここは空白の地帯。
人生の中で
なくしてしまったものが眠る墓場。

言葉は既に風化するだけの弱さで
夢を見ることも、愛を語ることもなく

緑の美しさや、落日の優しさや
手の温もりや、星屑の希望や

美しいはずだった風景も、感覚も
忘却に死んでいる。

ここは空白の地帯。
人生の中で
大切だったものが眠る墓場。

二つとはない大切だったものが
眠る墓場。






追憶


灯りのない真夜中を横切るのは
いつかの遠い残像。

傷ついた夜空に眠る沈黙の日々が
愛の色に染まる時
痛みや矛盾に満ちた夜も
間違いではなかった、と思えるのだろうか。

振り返る情景に
心を滲ませるいくつかの断片が
切なく、暗がりへと浮かび上がる。

人が知ることの出来る悦びや幸せが
世界の全てを埋め尽くす時が在るとすれば
それは、この世に生まれ落ちた
一瞬の時だけだったのかもしれない。

淡い陽炎のような遠い日々を
病んだ瞳は 静かに傍観している。

季節の風もなければ
誰の足音もしない
もうすぐ終える真夜中の時間で
月は安らかに何を問うのか。

追憶は柔らかな苦悩を
心に残している。

傷ついた夜空の向こう側で
冷静な光りが目を覚ます。

僕はそれが愛の色だとは知らない。

けれど、悲しみでもない色で
世界を染めている。







死を想い続ける日々


死を想い続ける日々。

見飽きたポルノ雑誌を手に取り
退屈な自慰行為を済ませる。
不愉快な整理現象。

死を想い続ける日々。

救われない心から逃れるように
カッターを押し当てて、血の色を確かめる。
熱い血の通った左腕。

死を想い続ける日々。

心臓は動いている。
体は細胞分裂を繰り返し
生命体としての形を造っている。

死を想い続ける日々。

生きている。
生きるために、必死に生きている。
体中のあらゆる臓器は止まることなく
今この時も、僕を生かし続けている。

死を想い続ける日々。

涙が溢れてくる。
とめどなく溢れてくる。
これは、命の答え。
これが、命の答え。

死を想い続ける日々。

それでも、死を想い続ける日々・・。





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