夜の冷静


心の涙を言語化する行為。

無意味で、下劣で、ひたすらに悲しいだけの行為。

それは静まりかえる夜の時間で
月だけが知る程度の出来事。

世界は、まるで落ち着いている。

和やかなほど冷静な世界で
眠りを許された人々の事を想う。

すぐに病んでしまうほど危ういもの(心)を
誰もが抱えているのなら
どうか、彼等がこれからも
夜の眠りに迷うことのないように
穏やかな眠りが約束されるように

愚かな日々を繰り返す中で
自分が唯一、願えることは
愛すべき対象の全てが
こんな悲しい詩を詠うことの無いように
願うことだけでした。




懺悔


無性に懺悔をしたくなる時がある。

こぼれ落ちた季節の全てが
間違いであったかのように

過ぎ去っていった
いくつもの分岐点を見つめながら

正しい生き方や死に方を
不毛に問いかけて

沢山に溢れ出る記憶と感情を
慰めるように

無性に懺悔をしたくなる時がある。


生まれてきてしまって、ごめんなさい。

幸せにしてあげられなくて、ごめんさい。

ごめんなさい。




雨の情景


雨の一粒に隠れた涙の向こう側で
垣間見えていた精神の限界。

病の果てに辿り着いた終末の光景が
色褪せた世界で浮かぶ。

誰も知らない自由な未来がそこにあるのだろう。

絶え間ない雨の揺らめきが
心を乱し、涙を濁す。

時の悪戯に消えた昨日という日々を
繰り返し、積み重ね、ここに立っている。

痛みを清算する事が死という行為ならば
生とは一体なんだったのか。


劣化するだけの心は
降り続く雨の中を、溶けていった。




ひかり


蛍光灯のわずかな光りにすら群がる虫のように
醜いまでに、求めた光。

閉塞した空の向こう側に
夜の終わりが約束されているのなら
誰も、真夜中の暗闇に怯える必要など無いのだろう。

つかの間の悲しみを持て余す時間が
宇宙の一瞬に過ぎない事など
この小さな惑星で生きる者は、誰も知らない。

星や月の輝きでも満たされない乾きが
心の深くで、うごめいている。

恥や外聞も捨て、足掻くように求めた光。


それは紛れもなく「生」だった。

そして人は確信するだろう。
嗚呼、これが「生きる事」なんだ、と。





漂流する空は普遍でありながらも
マイノリティな空間。

無作為な気流に乗せて
人が巡らせる想いの全ては
孤独で、惨めで、満ち足りない。

命の価値や痛みの代償を
空という広大な無法地帯に投げかける。

それは問うほどに
悲しい定めを突き付けられているようで
空の深みのさらに深みへ吸い込まれていく。

偽装が施された心の奥に潜む本質は
誰にも分からない。

空は、人の心が常に少数派である事を教えてくれる。

日々の中で、空を意識する時間が本物なのか。
意識しない時間が本物なのか。

漂流する空はどこへ辿り着くのだろうか。

ただ言える事は、常に空は
満たされない夜でも、救われない朝でも
残酷なほど綺麗だった。




溶けていく夜


遠のく空の片隅で、溶けていく夜。

夜という限られた時間の中で費やした悲しみなど
それは知る由もなく、無情に流れる世界。

どれだけの月の光も 、どれだけの人の想いも
儚く消えるだけの命だ、と告げるように
時は、その流れを止めはしない。

処理しきれない情報として
心に留まった感情は、光を知らぬまま
消える夜をいつまでも彷徨うのだろうか。

歳月の犠牲の中で
遙かなる日々の忘れ物を探している。

遠のく空の片隅で、溶けていく夜。

世界で唯一、光と呼べるものが
空を溶かしていく。

置き去りにされた心を残して。